白昼社とその周辺

白昼社と泉由良のお知らせブログです。

“worst e.p.”について(説明)

こんにちは。犬と名乗っている者です。社会人です。趣味は音楽です。


高校生のときに軽音同好会に入ってから、ちっぽけなアイデンティティを手放すものかとばかりに、年越し蕎麦も真っ青の細く長いバンド活動を続けてきました。でも同じバンドを続けているわけではなくて。高校・大学・社会人とステージが変わっていくごとに住む場所も環境も変わり、転々と組むメンバーを変えながら趣味として続けてきました。大学の軽音サークルのコピーバンドや、アニメソングのカバーバンドのサポートや、好きなロックバンドがいっしょの友達と初めて組んだオリジナルバンドや、そんな日々を経て。いまは一人です。

でも社会人になったらそうなることは分かっていて、だからぼくは16才の誕生日に買ってもらったベースギターから、いまはアコースティックギターに持ち替えています。それを手に取って下手なりに作詞作曲をしながら「趣味の音楽」を続けています。






ぼくが初めて心から好きになったバンドは、日本のART-SCHOOLというバンドでした。激しいサウンドや歌詞が、10代の自分の心を慰め、必死に支えようとしてくれました。

初めてライブというものに行ったのもART-SCHOOLでした。心斎橋の地下のライブハウスで、1曲目の「プール」という曲のイントロのギターが鳴り始めた瞬間のことを思い出すとき、ぼくはすぐに16才の自分に戻ることができます。

ライブハウスの真っ暗闇に包まれて、兄のおさがりの服でできるだけのお洒落をしようとして、背伸びをしてライブを目に焼き付けようとしている、赤らんだ頬の自分を。







その日から何年も過ぎて、ART-SCHOOLというバンドは「心のベストテン第1位」とはまた別の特別な存在となりました。(それを愛と呼ぶかはここでは詳しく言及しないことにしましょう。)大人になったぼくは、2017年の春にSNSで知り合ったメンバーとバンドをまた組むことにしました。それぞれ知り合った経緯が別のメンバーです。



ひとりは、mixiのバンドコミュニティで随分前に知り合った親友から紹介して貰ったベーシスト。ひとりは、ぼくが数年前からアーティストの大森靖子さんを敬愛するようになり、同じ大森さんのファンとしてTwitterでゆるやかに交流のあったギタリスト。もうひとりは、また別のマイナーなSNSで共通の音楽の趣味を通じて知り合ったドラマー。私達は全員、ART-SCHOOLが好きで、大学時代に軽音サークルに入っていて、社会人になってからはあまりバンド活動をしていない、という共通項を持っていました。




「生活に負担にならないように、ちょっとだけ一緒にやってほしい」と声を掛けて、月に一度ワリカンでスタジオに入り、音を鳴らすことにしました。



アレンジを考えたり、餃子の王将に行ったり、話し合ったり、鳥貴族に行ったりしながら、とても穏やかなペースで楽曲制作をして、2017年の12月に3曲の録音をしました。そして改めて餃子の王将に行って乾杯をして、私達のバンドは解散しました。ぼくが来年に転居することを決めたからです。

そうして3曲プラスおまけの弾き語りが入った音源「worst e.p.」というCDが出来あがりました。







これは世の中に無限のように出回っているCDのうちのたった1枚に過ぎないし、データをパソコンに取り込めばおおよそ不要品になる丸い板でしかありません。

でも、いまここで生きていて、やがて必ず死ぬであろうぼくという個人の、2017年の心のうつろいの記録であることには間違いないと思います。



そういうことに思いを馳せながら聴くのも、少し面白いんじゃないかなと思っています。





自作の曲にスネアの炸裂音が、ファズのうねりが、サンズアンプの歪みが混ぜ込まれて、構築されていくのはとても嬉しい時間でした。メンバーのいしまつくん、リョージくん、かえりやまさんには本当にお礼を言いたいし、1年間気前よく付き合ってくれて、なんでそんなに性格が良いのか、もはや疑問を感じるレベルです。また、各楽曲に素晴らしい絵を与えてくれた画家のさいあくななちゃんと、CD制作を全面的に支えてくれた白昼社の泉由良さんにも感謝しています。毎月お世話になっていたSTUDIO 246も快適で優れた音楽スタジオでした。



思いがけず謝辞のようになってしまったけれど、こういう経緯で「これ」は出来たんだよというのを説明したいだけでした。あなたが「これ」を手に取ってくれると、きっとあなたとわたしの人生がほんの少し触れ合うのでしょう。



ありがとう。



ではまた次の機会に。










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